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1999/10/01
国会からの手紙
第20号:茨城県東海村・臨界事故
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このメールマガジンは、発行人「てつ」が個人的な立場で、発行するものです。
ここで示される見解についての文責は、すベて「てつ」に帰し、所属する民主
党や参議院議員とは、一切関係はありません。
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目次
● 民主党によるヒアリング
● 臨界事故を起こした会社
● ヒアリングでの質疑
● 救急隊員が被爆したことについて
● ハード的な安全装置について
● 事故の起きた設備の特殊性について
● 人的な安全システムについて
● その他の質問
● 編集後記
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● 民主党によるヒアリング
昨日(9月30日)午前10時35分、茨城県の東海村で臨界事故が起こり、放射性
物質が漏れました。そのことについて、今日の16時から、衆議院第2議員会館
の会議室で、民主党の国会議員による関係者からのヒアリング(事情などを聞
くこと)がありました。
今回は、その時に聞いたことを自分なりにまとめて書きたいと思います。ただ、
私の記憶をもとに書いていますので、必ずしも正確ではないかと思います。そ
の点は、御了承ください。
● 臨界事故を起こした会社
株式会社 ジェー・シー・オー(略称JCO)
資本金 10億円
株主 住友金属鉱山(株) 100%
【事業】
原子燃料の製造・売買
ウラン化合物の精製・売買
原子燃料サイクル(転換・濃縮・再転換・再処理等)に関する研究・調査
放射線照射による滅菌・改質の受託業務
その他、付帯関連する事業
【東京事務所】
東京都港区新橋5-10-5
TEL 03-3437-6694(代表)
FAX 03-3578-9506
【東海事業所】
茨城県那珂郡東海村石神外宿2600
TEL 029-287-0511(代表)
FAX 029-282-7884
● ヒアリングでの質疑
科学技術庁・資源エネルギー庁・警察庁・核燃料製造会社「JCO東海事業所」
からの報告の後、質疑が行われました。その質疑の様子を書こうと思います。
ヒアリングでの質問は、原則的に国会議員がしますが、電力関係の議員の秘書
などは原子力の専門家ですので、今回のヒアリングでは例外的に秘書も積極的
に質問をしていました。
● 救急隊員が被爆したことについて
質問「なぜ、救急隊員が被爆したのですか。通報したときに、被爆
の事故だと報告しなかったのですか。」
回答(JCO)「その点については、確認していません。」
救急隊員が、通常の装備で救助に向かって被爆してしまったことを受けての質
問でした。JCOの回答を聞いた印象では、緊急事態に冷静に対応できなかっ
たのだなと思いました。
質問「事故の際のマニュアルはあったのですか。」
回答(JCO)「臨界事故の際に、すぐに退避する・通報するというマニュア
ルはありましたし、定期的に訓練していました。しかし、どのように通報する
かという点に関しては、確認していません。」
この回答は、上の回答と組み合わせてみると、「マニュアルが不十分なのだっ
たのでは」という疑念が湧きます。JCOの社長とともに来た実務担当者だか
ら、かなりの責任者だと思うのですが、その人がきちんと答えられないのは、
問題だと思いました。
● ハード的な安全装置について
質問「18%の高濃度ウランなら、8キログラムで臨界が起きます。16キログ
ラムなら、臨界が起きて当たり前です。量的な警報はなかったのですか。」
回答(JCO)「ありませんでした。」
質問「エリアモニタというのは、事故が起きた施設の近くのものが鳴るのでは
ないのですか。」
回答(JCO)「一定レベルのガンマ線を感知すれば鳴るようになっています。
一つのエリアモニタが鳴れば、他のものは鳴らないようになっています。」
質問「そうすると、一つが鳴っても、どこで事故が起きているか分からないと
いうことですか。」
回答(JCO)「そういうことです。」
質問「点検口からロウトで流し込んだという話ですが、蓋をボルトなどでしめ
ていないのですか。」
回答(JCO)「目視するために簡単に蓋が外せるようになっています。」
「人間はミスをする」という前提で、ハード(設備)が作られていないのだな
あ、という印象を持ちました。私の親父は、博士号を持つ科学者で、「科学に
絶対はない。科学者は「絶対にない」ということを言ってはいけない」といつ
も言っていました。私は、科学の進歩は常識を疑うことからはじまると思いま
す。科学の無謬性(間違いを起こさないこと)を前提とするこのようなシステ
ムには、科学的に致命的な欠陥があったと思うのです。
● 事故の起きた設備の特殊性について
今回の事故は、高速増殖炉実験炉「常陽」の燃料を作る施設で起きました。通
常の核燃料は、核分裂性ウランの濃度が3〜5%です。これに対し、高速増殖
炉の燃料は、約19%と非常に濃度が高いです。今回の事故は、濃度が高い燃
料を作るがゆえに起きたと言えると思います。
質問「事故が起きた施設は、軽水炉の燃料も作っていたのではないですか。」
回答(JCO)「高濃縮の専用施設でした。しかし、形状制限がなされていま
せんでした。」
質問「貯塔を通す工程をスキップしていたのが、事故の原因だそうですが、こ
ういうスキップは、いつも行われていたのではないでしょうか。」
回答(JCO)「この施設は、高濃度の専用施設であり、スキップしたのも今
回だけです。」
私は、「いや、別の施設とはいえ軽水炉型の燃料を作る際にいつもスキップし
ていたがゆえに、常陽用の高濃度の燃料を作る際にもスキップしちゃったのが
原因ではないか?」と思っていました。
質問「事故を起こした三人は、経験が浅かったのではないですか。」
回答(JCO)「いえ。一人は、勤続23年。もう二人は、勤続15年のベテラン
です。」
ベテランならば、なおさら、いつもしないことをするはずがないと考えるのが、
普通の考え方でしょう。
● 人的な安全システムについて
質問「この三人の人たちをチェックする人はいなかったのですか。」
回答(JCO)「一人は、リーダー格の副長。残り二人が、作業員(重傷にな
った二人)で作業にあたっていました。この三人をチェックするのが、職場長
でした。」
質問「その副長に、何か資格は必要なのですか。」
回答(JCO)「特に資格はありません。」
今日のテレビでは、資格を持っていたという報道がなされていたので、回答し
た担当者はかなり緊張していたのかも知れません。しかし、人的な安全システ
ムが欠けているのだという印象は否めません。
質問「こういう施設には、資格を持った者が必要ではないのですか。」
回答(科学技術庁)「このような施設には、『核燃料取扱主任者』が必要です。」
質問「この施設では、その人は、誰ですか。」
回答(JCO社長)「申し訳ありませんが、知りません。」
「社長がこれでは、起きるべくして起きたのかもしれないな」と思いました。
みんな失笑していました。
● その他の質問
質問「IAEAの査察は、いつ受けていますか。」
回答「毎年一回、棚卸しの3月に受けています。」
● 編集後記
今日のリアルタイムの国会の姿を書きました。ちょっと、こなれていないし、
正確ではないかも知れませんが、雰囲気が伝わればいいかな、と思って発行す
ることにしました。
明日(or明後日)から、休日を含めての約10日の出張です。できれば、出張
先から発行したいと思います。
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紹介ください。但し、改変しての転載・再配布を禁じます。
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「国会からの手紙」 第20号 発行部数:3189部
まぐまぐID:0000016530
発行人:てつ [email protected]
出版者:『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/
解除・新規登録 http://www.mag2.com/m/0000016530.htm
http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Bull/1803/
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