注意書き

10時間ほどプレイしたのですが、このゲームはまだ未完成だという印象を受けました。
SSIのホームページの、パッチリリーススケジュールを見ればわかりますが、修正しな
ければならなかった多数の不具合が、修正される前に発売されたようです。もっとも、
現在のほとんどのゲームは、いくつか不具合が残ったまま発売されるのが普通ですし、
ゲームプレイに関して、直接影響を及ぼすような不具合は、まず紛れ込んでいないた
め、私自身は、一応黙認する立場をとっています。
ですが、Panzer Commanderに関しては、ゲーム性を損ねる不具合が埋もれており、
どうしても黙認できません。どうしても黙認できない、というのは、パッケージに入って
いるソフトが完成品だとは思えない、ということです。
そういうわけで、今回、ここに書く紹介は、暫定的な文章であって、AIトラブルが解消さ
れたときに、正規の紹介文を書こうと思います。恐らく、秋頃でしょうね。


TitlePanzer Commander

直輸入版
DeveloperUltimation
Publisher
SSI

レビューした人:BH

<プレイに使用したマシン>
P200MMX
48MB
MONSTER3D
AWE32 PnP
Thrust Master FCS



1)ゲームシステム
プレイモードには、シングルシナリオ、キャンペーン、マルチプレイヤーモードがあります。

シングルシナリオは、英米独ソの四カ国分用意されており、一カ国につき、10本あります。
乗る戦車、あるいは、自分の小隊の規模はシナリオで決まっているため、変更できます。
変更できないというよりも、これは、ゲーム全体に関して言えることなんですが、ブリーフィ
ング時に、自分の搭乗する車輌名を表示してくれないのです。キャンペーンのときは、小
隊情報を知るアイコンがあるので、問題はありませんが、シングルシナリオでは、シナリオ
を選んで、ブリーフィングを読んで即戦闘画面です。つまり、シングルシナリオでは、自分
の目で車輌を識別するしかないんですねえ。なお、シナリオ自体は、仮想ものはほとんど
なく史実ものがほとんどのようです(但し、パッチで増える可能性あり)。

キャンペーンは、独軍とソ連軍でプレイすることができ、それぞれ3種類づつ用意されていま
す。戦闘を経験するにつれて、戦車兵の練度があがり、強い戦車にアップグレードされる、
ということになっています。なんだ、Panzer GeneralやSteel Panthersみたいじゃないか、
とお思いになられるかたがいらっしゃるかもしれませんが、Panzer Commanderにおいては、
前述のプラス要素が、PGやSPのようにゲームを面白くする要素になっているかどうか、甚だ疑
問であります。まず、強い戦車にアップグレードする、といっても、ビクトリーポイントがあって
それをやりくりしながら部隊を強化していくのではありません。自分の小隊が、多くても僅か
3輌であるためかどうかは知りませんが、特定の時期になると、ミッション終了後に、「新しい
車輌が入手可能になりました、アップグレードしますか?」と聞かれて、はい/いいえ、をする
だけです。よっぽどものずきな人でない限り、はいを選ぶのではないでしょうか。こんな質問
は、かなりナンセンスだと思います。もうすこし、なんとかして欲しかったですね。
それから、練度の話ですが、AI問題(後述)が解消された暁には、まちがいなく、練度が上が
ることイコールプラス要素となるでしょうが、現段階では、練度が上がることは、必ずしも、小隊
中の戦力向上に貢献しません。なぜなら、もともとAIアルゴリズムがほぼ失敗作だからです。
逆に、わたしのような気の小さい人間は、それほど役に立つわけでもないのに、練度の高い戦
車兵が死ぬのを嫌って、何十回とシナリオをリスタートするすることになります。要するに、ただ
の足引っ張り要素にしかならないのであります。このあたりは、個人差がかなりあると思うので、
意見が割れると思いますが、少なくとも、わたしは、2号車・3号車の撃破でリスタートしまくりまし
た。例外として、歓迎できるのは、一号車の乗員の練度向上です。一号車だけは、自分が完
全にコントロールできるわけですから、装填速度や命中精度が高くなるのは、喜ばしいことで
す(書き忘れましたが、プレイヤーがコントロールできるのは、一号車のみで、二号車、三号車
に対しては、隊形変更、敵を攻撃せよ、撃ち方やめ、などのコマンドで間接的に指示を与える
ことができるだけです)。
わたしは、ドイツ軍のキャンペーンを3種類手をつけたのですが、そのうち2つは、8シナリオ目
まで行きました。AI問題と絡んで、非常に難しいシナリオが多くあります。特に、最初の3、4シ
ナリオは、はっきりいって普通にプレイすると、コンプリートが困難です(但し”第21戦車師団”
を除く)。これらのシナリオは、戦争初期のフランス侵攻やポーランド侵攻を題材にとっている
ので、必ずといっていいほど、ルノーR35という戦車が敵として出現します。防御力が高い戦
車で、SPでも泣かされた相手なのですが、今回は、泣かされるどころが強すぎて勝てません。
零距離射撃を繰り返して、戦闘不能にすることはできるのですが、完全に撃破することはでき
ません。三号戦車G型(だったと思う)でもこんな状況なので、おかしいなあと思い、R35のVD
F(車輌定義ファイル。書き換え可能なので、色々面白いことができます)を開いたら、マニュア
ルにある設定よりも、胴体部の装甲が全方向、20も厚く設定されているではありませんか。Read
meのマニュアル訂正をみても、このことは書いてなかったので、明らかにVDFのほうが間違っ
ていると思います。皆さん、早速訂正しましょう。R35の件は大目にみてあげるとしても、全体的
に、いきなり狙われてるシナリオやら、AIを落とすためとしか思えない谷があるシナリオ(第21戦
車師団のシナリオ)など、難しいシナリオで溢れています。難しい割には、充実感がないような気
がしますし、徐々に難易度があがっていくというわけでもないようです。歴史に忠実に作ったため
にこうなったのでしょうか?それとも、製作者側がバランス調整に失敗しているだけなのでしょうか?
理由はなんにせよ、「難しいだけで面白味がないキャンペーン」としか感じられません。

マルチプレイヤーモードは、うちにある古いほうのPCで動かすと、メニュー上で蹴られて
しIPXかTCP/IPかを選択する画面にすらたどり着けないため、いまだに試すことがで
きません。他のゲームでは、IPXで繋がるのに・・

文句ばっかり書いてしまいましたが、このゲームがカスゲームかといえば、わたしはそうで
はないと思いますし、このゲームを嫌っているわけでもありません。むしろ、Panzer Co−
mmanderを気に入っている人間であります。
わたしを引き付けているこのゲームの魅力とは、現実的な力学モデルと20種類以上の車
輌(前述のVDFを書き換えることで、設定の変更ができる)に乗り込むことができる点です。
現実的な力学モデル、というのは、フライトシミュレータの世界では当然のこととなっているか
も知れませんが、戦車モノに関していえば、これほど精密なモデルが搭載されたゲームは、
Panzer Commanderが初めてではないでしょうか。「これほど」といっても、どれほどなのか
はっきりしませんので、具体例を上げますと、主砲の口径や初速、車体の質量よって主砲射
撃時の反動が違う、不安定な姿勢(丘に前キャタピラをひっかけた体勢など)で主砲を射撃す
ると、ずるずると後退する、起伏のある盛り土などを走行するときに、キャタピラが滑る、といっ
たところです。地味ですし、戦車のなかにいると気づかないのですが、外部視界で戦車を見ると、
あまりに生々しい動きに感動してしまいます。どうせなら、ビデオ録画機能もつけて欲しかったで
すねえ。邪道ですが、VDFを書き換えて、主砲の初速を異常に速くして、車体を異常に軽くした
ところ、主砲の反動によって戦車がとんでもない速さで空中に飛び上がりました。やはり、本当に
現実的な力学モデルを使用しているようです・・。感動モノ。
搭乗できる車輌に関しては、英米独ソのうち、英独ソに重点があるように感じました。戦争初期の
戦車から、IS−2、パーシング、センチュリオン(V1.1のパッチ必要)、パンターシリーズ、ティー
ゲル1、2など、その手の人が乗りたがるような戦車がちゃんと用意されています。次のグラフィック
の項目でも書いていますが、各戦車、主要な特徴どころか、比較的細かい特徴まで捉えてオブジ
ェクト化されており、外部視界からみた「冬季塗装ティーゲル」などは身震いものであります。

最後に、シナリオエディッタの存在についても書いて置かなければなりません。本ゲームは、3Dの
地形データからマップを構成しているのですが、付属のエディッタを使うことで、簡単に自分の思う
地形を製作することができます。一般に、3Dマップをエディットする、というと、難しそうに聞こえます
し、見た目も難しそうなのですが、このエディッタは、メイン画面がトップビューで、非常にわかりやす
いと思います。シナリオに関しても、砲撃支援・航空支援までいじることができるなど、詳しい設定が
可能です。次回か、その次のパッチがよかったら、シナリオエディットして、このページに置くかもし
れません。と、公にいいたくなるほど、分かりやすそうなエディッタなのです(そうな、というのは、まだ
使ってないから・・)。


2)グラフィック
Voodooチップでアクセラレートしたゲームとしては、標準的か、あるいはもう少し上、と
いった程度だ・・・と思っていたのですが、よくみると、同軸機銃が突き出ていたり、ソ連
系戦車には政治スローガンが書き込まれていたり、カモフラが3種類も用意されていたり
します。グラフィックに関しての製作者側の気合の入りかたがわかりますね。
特殊効果としては、主砲を撃ったときに、その先端から煙が吹き出す、キャタピラの跡が
地面に残る、転輪がちゃんと回転する、キャタピラがぐにゃぐにゃまがる、榴弾やはじか
れたHE弾が飛散する、などがあります。V1.1からは、機銃弾にトレーサー(曳光弾)が混
ざるようになりました。イニシャルリリース版では、トレーサーがないのです。信じられない
話ですが。個人的には、榴弾砲の着弾する様子が好きです。

フレームレートに関しては、グラフィックの美しさの割には軽い(12FPS程度)、という印
象をうけました。敵戦車が何輌か出現したり、森林の近くを通過しても、フレームレートが
悪くなることはないようです。ただ、村などの建築物が密集している地域やブロック塀が長
く築いてある場所では、重くなるようです(最低で5FPS程度)。重くていやなときは、撃つ、
つっこむなどして、家屋を倒壊させましょう(おいおい)。


3)ミュージック&サウンド
音楽は、メニュー時に流れるクラシック調のメインテーマと、キャンペーンで使われる、昇進、
メダル授与などにつかわれる小テーマだけです。戦闘中には、音楽はありません。
サウンドは・・・実物をしらないだけに、どれほど実物に近いかについて語ることは、できません
が、雰囲気は非常にでていると思います。意外に、37mm程度の口径でも、射撃音は立派な
んです。CPUに負担はかかりますが、特別なハードがなくても、ソフトのほうで3Dサウンドを出
してくれるオプションがあります。Waveファイルから音をとっているようですね。


4)海外の雑誌・サイトにおける評価
雑誌のほうのレビューはまだ読んでいませんので、どのような評価をうけているかは分かりませ
ん。ただ、わたしが読んだThe Adrenaline Vaultのレビューでは、味方が役に立たないとか、AI
が無能だとかで、ボロボロに書かれていましたが、それなり面白いところはある、とも書いてありま
した。結果としては、星5中3.5くらいだったと思います。


5)必要な英語力
マニュアルを読むために必要な程度です。ちょっと読解力があれば、問題ないでしょう。


6)わたしの感想
未完成品だと思います。このゲームの運命は、今後の製作者側の努力にかかっているといっても
過言ではないかもしれません。SSIのホームページを見たら、AIを再デザインすると書いてありま
した。期待して待つことにします。でも、どうせだったら、最初から、練ったものを売ってほしかった
ですね。それから、キャンペーンシナリオのほうも見直しも必要かも・・。


番外編)AI問題
わたしが見つけたAIの不都合は、以下の通りです。これらのおかげで、ゲームの難易度は極めて
高くなっています(爆)。ここでいう車輌とは、自分の小隊の戦車のことです。

1.コラムフォーメーション時に停車すると、後ろから押してくる車輌がある。特に敵に
照準しているときに押されると、照準が難しくなる。
2.LOS(射線、と訳すんでしたっけ)があるのに、AIガナーは突然撃たなくなる。結果
として、向こうから射 撃されて昇天。
3.隊列を無視して、のろのろと前進していく車輌がある。周りに敵がいるときに致命
的で、勝手に前進して 勝手に昇天する。防ぐ手だて、今のところなし。
4.車輌が、やたらとぶつかってくることがある。衝突からリカバーしない。
5.車輌が、上れない丘を上ろうとしてはぐれたり、塀や森、敵の残骸などひっかかって、
すぐ動けなくなる ことがある。
6.車輌は、谷をよけない。結果として、生きたまま戦闘不能になる。