シーラ:「全車、前進!」
シルキー:「前進、できません・・」
シーラ:「ああ、そう、足がないのですね。わたしたちの乗り物は。」
シルキー:「足をなくして、命が助かったと思えば、安いものですよ。」
フェリス:「こちら、HQ。1時間以内に、補給・整備部隊がそちらに到着する予定よ。損害が
軽微な車輌は、修復してもらって。損害を受けていない車輌は、各高地を占拠して、周囲の
警戒にあたること。」
シーラ:「了解しました。」
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
フィノ:「暗くなってきましたね。」
シーラ:「見晴らしのいい高地ですから、夜襲をかけられても、すぐわかりますね。」
ガラリア:「我々は、寝ずの番ですか。」
シーラ:「いえ。見張りは1小隊から、2人づつたてることになりましたから、今回は、
ゆっくり寝られますよ。」
ガラリア:「本当ですか!」
シーラ:「ええ。・・・ところで、先ほどの敵部隊が再攻撃を仕掛けてくるかどうかが気になるところで
すね。」
フィノ:「だいぶ被害をうけていたようですが、近くの部隊と合流して、再攻撃を仕掛けてくる可能性
は、高いかもしれません・・・」
ガラリア:「わたしが見張りに立つのは、何時から何時ですか?」
フィノ:「明日の2時から3時。」
ガラリア:「分かりました。では、おさきに失礼します・・シルキー、耳栓と目隠しは?」
シルキー:「はい。」
フィノ:「高地のまわりに、地雷原をつくったりはしないのですか?」
シーラ:「夜明けまでに、友軍の戦車中隊と工兵部隊が増援にくるそうです。本格的な陣地づくりは、そ
れからでしょうね。」
フィノ:「つまり、それまでは、細工なしの状態の高地を守り続けなきゃないんですね。」
シーラ:「そうです。」
フィノ:「この高地、守る価値があるんでしょうか?背の低い草が生えてる以外は、ただの丘ですよ。稜
線射撃ができるような場所でもない・・・・こんなに大きく、主砲に俯角をかけられないわ。」
シルキー:「坂が結構きつくて、頂上が急に平べったくなってるんですよね。昔の戦争なら、要塞砲みた
いなのを、ズン!と平らなところに据え付けるんしょうけど。」
ガラリア:「とにかく、戦車にとっては最高の場所とはいいにくいな。頂上の面積が狭くて下から丸見え
だ。まあ、こちらから攻撃する分には、真上からやつらの砲塔をぶち抜けるから気楽だが。」
隊長:「とりあえず、一段落ってところかな。・・・もう、7時か・・」
フェリス:「付近の戦区では、いまだに戦闘が続いているようです。」
隊長:「一進一退だろう、この辺は。国連軍にしてみれば、もう、後がないからね。防衛線を
突破されれば、あっという間にマルセイユが陥落する。そうしたら、ヨーロッパは終わりさ。」
フェリス:「ですが隊長、明らかに敵は、日増しに戦力を増強していますよ。数に関していえば、
それは間違いありません。」
隊長:「このままでは、力押しされちゃうよなあ、参った、参った・・。」
フェリス:「なんか、ノンキですよね・・・隊長って。ところで、昼間に高地に防衛に当たっていた守備
隊が、予想以上の規模だった
点についてですが・・」
隊長:「問い合わせてみたのかい。」
フェリス:「はい。付近の野戦司令部に問い合わせたところ、例の守備隊に関する情報は、”無線交信”
から収集されたとのことでした。」
隊長:「敵の無線交信を傍受して、それを真に受けたんだな。あぶなっかしいなあ。敵は、こちらが嘘に
騙される正直者だってことを知っていたんだろう。それで、我々をおびきだすために、虚偽の無線交信
をしてたんだ。」
フェリス:「で、もくろみが成功して、144中隊は全滅・・」
隊長:「こんな調子では、先行きが不安だなあ・・」
フェリス:「な!?なにをおっしゃるんですっっ!この戦況を打開するために、我々がきたんじゃないで
すか!」
コニー:「そう、そうですよ。隊長。弱気になってどうするんです。」
隊長:「ああ、君たちのいうとおりだ。・・・とりあえず、気分転換に、夜風にでもあたってくるかな
あ。」
フェリス:「あ、あの・・ぉ」
隊長:「じゃあ、ふたりとも、ここは頼んだよ。」
ガチャ
フェリス:「ム・・、ついていこうと思ったのに。」
コニー:「隊長は、きっとひとりになりたいんですよ。」
フェリス:「そお?そおかしら?私にはそうは見えないけど。隊長、”誰かお供してくれるひと、募集し
てます”って言わんばかりの目つきだったと思ったけど。」
コニー:「考えすぎですよ。・・・それは・・」
かつかつかつかつ
隊長:「・・・・うーーん・・」
知子:「隊長。どうなさったんですかぁ、しょぼくれた表情しちゃって。」
隊長:「ああ、少尉。君こそどうしたんだ。勤務中じゃなかったのか。」
知子:「監視員のみなさんは勤務中。現場責任者のわたしは、もう、あがりの時間なんですよ?」
隊長:「あがりって、・・・あ、もう8時か。道理で暗いと思ったら。」
知子:「トロイのねえ。隊長は。いったい、今何時だと思ってたの?」
隊長:「なれなれしいなあ。こんなところ、ほかの隊員にでも見つかったら、大変だぞ。」
知子:「・・隊長は、これからどうなさるつもりでありますか?」
隊長:「ふむ・・そろそろ夕食をとろうかと思っていたところだ。」
知子:「では、その夕食、わたくしが作って差し上げましょう。」
隊長:「そのかわり、君の部屋で遊んでいけっていうんだろう。」
知子:「もちろんであります。」
隊長:「仕方がないなあ。ちょっとだけだよ。」
知子:「ところで、何か気になることでもあったんですか?」
隊長:「え?」
知子:「さっき、表情が暗かったじゃないですか。」
隊長:「ああ、いや、たいしたことじゃないんだ。」
知子:「では、教えてくださいよ。」
隊長:「うん・・。国連軍、大丈夫かなあって思ってたんだ。」
知子:「はっ?」
隊長:「反帝同盟軍に、裏をかかれてる。このままの状態では、よくないことになりそうだって思ってた
んだ。」
知子:「おっしゃることが、よく分かりません。」
隊長:「国連軍の体質や作戦の立てかたが、敵に漏れ出してるみたいなんだ。」
知子:「ふーん、・・で?」
隊長:「よくないじゃないか。あっちは、こちらの手が読めるわけだから。」
知子:「大丈夫よ。ニッチもサッチもいかなくなったら、黙って逃げればいいだけの話じゃない。」
隊長:「無責任だなあ。」
知子:「賢い人は、負けそうな戦いはしないものよ。」
隊長:「でも、部下が戦ってるというのに、指揮官が逃げるなんて話はないだろう。」
知子:「そーかしらね。私は、悪いけど逃げるわ。あなたが戦ってても、私は逃げるわ。」
隊長:「敵に捕まっても味方に捕まっても、酷いぞ。大変な目にあうんだぞ〜。」
知子:「うっ・・・それは嫌ね・・・。想像しただけで気分が悪くなるわ。別な手を考えておくことにす
るわ。」
隊長:「そのほうがいいな。仲間を見捨てて敵前逃亡するのは、良くないよ。」
知子:「・・・きりのいいところで、目的地についたわね。さ、部屋に入って。」
ガチャ・・・
フィノ:「敵のくる気配は、ないわ。いまのところは・・」
シルキー:「他の戦区があわただしいから、こちらのほうまで手が回らないかもしれませんね。」
フィノ:「だといいけど。・・・油断禁物よ。敵が、どこかに隠れてるんじゃないかって、疑って暗視装
置を覗かなきゃだめ。」
シルキー:「昔の戦車って、こういう望遠機能付きの暗視装置なんて、ついていなかったんでしょう
ね。」
フィノ:「昔のって、いつの?」
シルキー:「今から40年くらい前の・・」
フィノ:「多分、なかったはずよ。当時のドイツ軍が、狙撃兵用に赤外線暗視スコープを実用化したとい
うはな
しは聞いたこと
があるけど、戦車用の暗視装置に関しては、皆無だったと思うわ。」
シルキー:「でも、夜間の戦闘はあったんですよね。」
フィノ:「そうよ。」
シルキー:「すごいと思いません?わたしたちのM60A3の夜間暗視能力は、パッシブ式で1.2K
mも探知できるんですよ。それでも、夜襲の危険性があるって言われれば、オドオド、オドオドして敵に
備えなきゃないんです。こうやって、身を震わせながら暗視装置を覗かなきゃない。でも、昔の人たちっ
て、暗視装置なしで、夜襲に備えていたんですよね。どういう神経していたんでしょうか。昔の戦車兵っ
て、ほんと、心臓に毛の生えたオッサン連中だったとしか思えません。」
フィノ:「そういわれてみれば、そうね。いつ、どこから敵がでてくるかなんて、全然予測がつかない
わけだから・・度胸がないと、勤まらないわね。行軍時にしろ、拠点を防衛してる時にしろ・・・並大抵
の緊張感ではなかったはずよ。」
シルキー:「私だったら、緊張の連続で、気がフれてしまいます。偉かったんですねえ・・、昔の戦車
兵。」
フィノ:「ねえ、ここはあなたに任せるわ。目が冴えてるみたいだから。わたしは、車外にでて、警戒に
あたることにする。・・というよりも、皆の様子をみてくるわ。」
シルキー:「わかりました。任せて下さい。なにかあったら、すぐ戻ってきてくださいね。」
フィノ:「ええ。」
ギーー、バタン
フィノ:「よいしょっと・・」
フィノ:「(外は意外に、空気が冷たいわね。)」
・・・・
・・・・
キーン:「攻撃ヘリも、偵察飛行すればいいんですが。」
リムル:「そういうわけにも、いかないでしょ。あっちは、2機しかないんだから、交代で警戒にあた
るっていったって、寝る暇ないでしょぉが。」
キーン:「寝る暇なんてとんでもない。徹夜で警戒にあたるくらいの根性がなければ、パイロット失格で
すよ。」
リムル:「第一、徹夜で疲労して、敵が攻めてきたときにバテてたら、はなしになんないじゃない。」
キーン:「それはそうですが・・」
リムル:「キーンは、物事をタイキョク的に見る能力に欠けてる!それに、わたしたちだって徹夜なんか
しないんだから、向うに徹夜しろっていうわけにもいかないでしょう。」
キーン:「・・・・」
ガサッ!
リムル:「ムッ、」
フィノ:「おっと・・撃たないでちょうだいよ。7.62mmなんかで撃たれたら、わたし、一たまりも
ないわ。」
キーン:「今晩は。少尉。」
フィノ:「今晩は。調子を見に来たの。」
リムル:「ビックリした・・。なにも、茂みの中からでてくることはないでしょ。」
フィノ:「目が覚めたでしょ?で、あなたたちは、車外にでていたの?」
リムル:「そう。わたしとキーンがキューポラから双眼鏡覗いて、他の2人は、車内で暗視装置を覗かせ
るようにしてたの。」
フィノ:「え?じゃあ、あなたの車の乗員さんは、誰も寝てないの?」
リムル:「いまはね。眠くなったら、わたしたちは寝るわ。もう、割り当てになってる時間も過ぎたし
ね。」
フィノ:「あなたの小隊の、別な隊員が見張りについてるんでしょ?どうして、ねむらないの?」
リムル:「人任せじゃ、心配だってこと。」
キーン:「そういうことです。見張りは、多ければ多いほどいいんです。」
フィノ:「それはそうだけど・・。大丈夫?休みとらなくて。」
リムル:「まだ10時でしょぉ。眠くなり始める時間でもないわ。心配しないでよ、眠くなったら、寝る
わ。」
フィノ:「そう。なんだか、頼もしいわ。ほっとした。わたしは、戻るわ。」
リムル:「そうしたほうがいいとおもうわ。おやすみ。」
キーン:「おやすみなさい。少尉。」
フィノ:「おやすみ、2人とも。」
リムル:「なにしにきたのかしら。」
キーン:「さあ。割り当てになってる見張りが、サボってないかどうか、ああやって確かめてるんじゃな
いんですか。」
リムル:「優しそうな言葉をかけてくるわりに、やってることがエグイのね。」
キーン:「世の中、そんなもんでしょう。人間の見かけと中身は、概して違うもんです。」
リムル:「そうよねえ。奇麗なバラには、刺があるっていうしね。」
キーン:「奇麗、ですかぁ、フィノ少尉が?わたしは、リムル少尉のほうが素敵だとおもいますけど。」
リムル:「おだてても、何も出てこないわよ。」
キーン:「おだてるだなんてェ、そんなあ・・・」
リムル:「・・・・・・・・・・・・」
キーン:「本当に、奇麗だとおもいますよ。少尉は。なんていいますか、繊細そうな、乙女っていう
か。」
リムル:「・・・・・・・・・・・・」
キーン:「本当ですってば・・・・、少尉?」
リムル:「・・・・・・・・・・・・」
キーン:「少尉?」
リムル:「1時の方向・・なんか、土煙みたいなものがあがってない?よく見えないけど・・」
シルキー:「・・あれ・・なにかしら・・・?・・まちがいないわ、敵襲っ!敵襲っ!BMPとT−62
だっっ、前方、距離1100m!前進中の敵戦車部隊確認!敵襲!敵襲よ!皆起きて!」
ガラリア:「・・っ・・なんだって・・?」
ギー、バタン
フィノ:「ただいまー。」
シルキー:「敵、敵です!」
フィノ:「な、いきなり???シーラ様!」
シーラ:「・・・はっ?」
シルキー:「敵襲です!」
シーラ:「ドラゴン1より全車へ!敵襲!攻撃に備えよ!」
シルキー:「前方、距離1050mです!」
シーラ:「前方、距離1050m!照準したものから、攻撃を開始せよ。ドラゴン1よりHQへ。我がほ
うに前進してくる敵戦車部隊と遭遇しました。攻撃を開始いたします。」
フェリス:「分かったわ!攻撃を許可します!後方の森林に待機しているAH−1も出すわ。コニー、高
地の後方に隠れるようにして攻撃を行うようにいって。」
コニー:「こちらHQ。バヨネット1、バヨネット2は直ちに、援護に向かって下さい。高地の後方に隠
れながら、攻撃を行って下さい。敵の装備する対空火器に関してはなにも分かっていません。気をつけ
てください。・・大尉?隊長、呼んできますか?」
フェリス:「その必要はないわ。サイレンを鳴らすわ。このサイレンを聞けば、飛んでくるでしょう。」
知子:「でね、その男に、カルチェの指輪買わせておいて、約束守らずに逃げてきちゃったんだって。」
隊長:「その指輪は?まさか、ちゃっかり受け取って、それから逃げてきたわけじゃないだろうな。」
知子:「もちろん、受け取ってきたそうよ。ちゃんと、見せてもらったわ。」
隊長:「いくら?」
知子:「10000ドル。」
隊長:「オイオイ、なんだそりゃ。目玉が飛び出るぞ。買うだけ買わせといて、ふるのは酷いだろう。」
知子:「極悪よねえ。でも、その子がまた、超可愛い子なのよ。あれだったら、男は騙されるわよねえ。
でも、あの子、良心の呵責を感じなかったのかしら。わたしもワルだけど、いくらわたしだって、そんな
ことできないわ。」
隊長:「女ってこわいよなあ。」
知子:「それは偏見よ。そういう人って、沢山いるもんじゃないわ。みんな、そんな悪人じゃないわ
よ。」
隊長:「そりゃあ、そうだけどさ。男はそんなことしないぜぇ。」
知子:「するわよ!こんな話もあるのよ、えーとねえ、」
ウウウウウウウーーーーンンン
隊長:「わっ??な、なんだ!」
知子:「タイミング悪いのねっ、最悪・・・・。」
フェリス:「”本野戦基地内の全ストロベリー戦隊隊員に告ぐ、高地防衛に就いているA、B、C、D小
隊が、敵戦車部隊と接触した模様。総員、・・・・」
隊長:「オイオイ!こっちがどういう格好してるか、わかってるのかい。こんな格好で司令室に出頭し
ろって?」
知子:「ぐちってないで、早く服を着なさい!もう、文句いってる場合じゃないでしょ?」
・・・・・
・・・・・
ガチャ!
フェリス:「隊長っ!なにしていたんですかっ!!!!遅すぎます!」
隊長:「あ、ああっ、ごめん。すまなかったよ。今度から、こんなことがないように気をつけるよ。」
フェリス:「シーラ大尉の部隊は、5分前に敵部隊を発見しました。撃ち合いは、2分前から始まってま
す!」
隊長:「航空支援は要請したかい?」
フェリス:「他の戦区があわただしくそうで、攻撃機はいそがしいそうです。」
隊長:「運がないなあ。」
フェリス:「”精鋭部隊なんだから、あんたがた、もっとがんばってくれ!”っていわれました。」
隊長:「そっか・・・」
フェリス:「頼りにされてるんですよ。」
隊長:「・・・ふむ・・そう思いたいね。では、戦車とヘリだけで戦わなきゃないな・・・。夜間の戦闘
では、暗視能力、射撃統制能力の劣る敵のほうが不利なんだ。それを承知で攻勢にでたという
ことは、なにか、手があるんだな。いい作戦があるか、それとも、数がそろっているのか・・」
コニー:「C小隊が、砲撃にさらされています!D小隊も!」
キュウウウウウウーーーーン!!!
ドドドドドド!!!
ドスっ・・
リムル:「わっ・・・損害は??」
キーン:「損害は、・・なしです!いまのところ・・」
シルキー:「SABOT、装填!」
ガラリア:「SABOT、発射!」
ドゴン!
ガラリア:「・・命中、T−62撃破!!次!チっ、撃っても撃っても・・これじゃあ、らちがあかない!
いったい!いくついるんだ!」
ガッチャン
カコッ!
ガッチャン
シルキー:「SABOT、装填!」
ガラリア:「よーーし・・SABOT、発射!」
フィノ:「リムル少尉の小隊が、激しい砲火を受けています!このままじゃ、みんな、足を破壊されてし
まいます!」
シーラ:「完全に、こちらの居場所がわかられているようですね。すぐに、わたしたちも標的になる・・
・どうしたものか・・」
ヘレン:「こちら、バヨネット1。HQ、どうしたらいい?TOWが切れたよ。」
コニー:「隊長、バヨネットが判断を仰いでいます。」
隊長:「無線をかしてくれ。」
コニー:「どうぞ。」
隊長:「・・・僕だ、敵の数はわかるかい?ざっとでいいんだが。」
ケイト:「T−62が40輌、BMP2が10輌以上です。ZSU−23−4は4輌いたけれど、全滅させま
した。近接支援の航空機は見えません。それから、砲撃ですが、すごい激しさです。損害をうける
のは、時間の問題ですよ。」
隊長:「よし、A〜D小隊は、高地を放棄して、後方の森林まで後退。バヨネットは、後退、弾
薬を補給せよ。TOWフルロードでいくんだ。」
ヘレン:「了解!」
マーベル:「了解、ワイバーン、後退。」
リムル:「ベヒーモスも後退!」
エレ:「な、後退?放棄?高地を放棄しろっていうんですか?」
隊長:「そうだ。直ちに後退!」
エレ:「敵に塩をおくるような行為を、敢えてしろというのですか!?」
シーラ:「全車、後退!はやく!!」
エレ:「仕方がない・・ヒドラ、後退・・!」
キュラキュラキュラキュラ!
フィノ:「せっかく占拠したのに・・・」
ガラリア:「なにをいうんですか!後退してなきゃぁ、力押しでねじ伏せられてます!あんなに数がある
んですよ、むこうは。」
シーラ:「敵側の射撃も、正確になってきています。このまま、この場に居座っていれば、T-62の主砲で
大破させられる車輌がでるのは間違いありません・・それに、砲撃のこともきになりますし・・。」
フィノ:「ですが大尉。後退するタイミングが早すぎるのではないでしょうか?もう2分あれば、10輌以上
の戦車を撃破することもできたでしょうに・・。」
シーラ:「そうかもしれませんね。ですが、こちらも損害をうけることになるやもしれません。隊長はきっと、
戦果よりも損害のほうを気になさっておられるのでしょう。」
キュウウウウーーーン!!!
ドドドドドドドド!!
ガツン!
シルキー:「うぅっ・・近かったわ。」
ガラリア:「これは、・・155mm級か?直撃したら、ちょっと問題ありだな。」
シルキー:「こんなところで、足がやられたら・・・」
シーラ:「ドラゴン1より全車へ。損害を受けた車輌はあるか?」
エレ:「なし。」
マーベル:「ありません。」
リムル:「ありません。」
シーラ:「よし、このまま後退して、後方の森林で待機する。」
隊長:「シーラ大尉、森林に逃げ込んで、丘がよーく見えるところに待機するんだ。敵戦車が、向こう側
から高地に上がってきたところを狙う。」
シーラ:「了解しました。」
フェリス:「なるほどーー。後退して、高地の後ろに入ってしまえば、高地の反対側で狙いをつ
けてる着弾観測員の目から逃れられ、正確な砲撃も受けなくてすむ、ってことなんですね。」
隊長:「そう。それから、シーラ大尉に聞いたんだが、あの付近の丘は稜線射撃にむかないそうだ。地図
上でみてもね、確かにそうなんだ。だから、敵が各高地を占拠したところで、向こうにとっていいこと
は、こちらの上部砲塔を狙えるということくらいしかないのさ。」
フェリス:「でも、それって・・敵にしてみたら、結構有利な点ですよねえ。」
隊長:「それはどうかなあ。T−62は照準の遅さと命中精度の悪さが売りだからねえ。こちらに命中弾
をあたえるまえに、撃破されるんじゃないかな。丘を上がってきた敵は、頂上付近をゆっくり前進しなが
ら索敵、森の木立に潜んでる戦車を発見し、それから照準する。シーラ大尉たちにとっては、格好の標
的じゃないのかな。そんないい的を狙って、いくらかでも損害をあたえようというわけさ。もちろん敵は、そ
んな危険性はよく承知しているんだろう。が、僕が思うに、むこうの目的は、高地の奪還というよりは、うち
の部隊の全滅じゃないのかな。だとすれば、丘を越えてこちらまで追撃しにくるに違いない。丘の向うから
顔をだしてくる戦車が多ければ、それだけ、損害を与えられるはず・・」
フェリス:「つまり、リスクを犯して敵が追撃してくるから、そのリスク分は、しっかりこっちの得にし
よう、ってわけですね。」
隊長:「だが、隊列を組んで、何十両も同時に、丘の向うから顔をだされるとこまるな。」
フェリス:「そうですよねえ。火力を集中されたら、負けちゃいますよね。」
隊長:「ま、そういうこと。そこで、ヘレン中尉たちに、敵の足並みを乱してもらうのさ。落ち着いて、
隊列なんか組めないように。」
フェリス:「すごーーい!隊長って・・そんな名作戦を思いつくなんて・・」
隊長:「いや、そういうわけではないんだ・・。僕のオリジナル、じゃないんだ。大先輩の知恵を拝借さ
せていただいたのさ。」
フェリス:「なんだ・・、そうなんですか。」
隊長:「いきなり名作戦が思いつくほど、僕は切れ者じゃないんでねえ・・あっはっは・・。」
フェリス:「でもぉ、どうして、敵の目的が推測できるんですか?」
隊長:「数さ。単純計算で、こちらの3倍以上だろう。いくらこっちにヘリがいるとはいえ、戦力差が大
きすぎる。彼らの最初の作戦がどうであれ、こちらの数をみて、包囲殲滅任務に切り換えていると思う
よ。」
コニー:「隊長!バヨネット1、2、FARP(前線補給所)に着陸しました。補給を開始します。」
隊長:「よしよし・・」
バーン:「見たか!国連軍のやつら、後退をはじめたぞ!」
ガラミティ:「しかし、こちらもかなりの損害を受けたぞ。ほんの数分間撃ち合っただけだというのに。」
ギネス:「俺達よりも照準が速いし、正確だ。下手すると、初弾命中だぜ。夜間だから、BMPの支援も
あてになんねえしな。」
バーン:「損害だと?この程度、損害のうちにはいらん!」
ギネス:「ほー、強気だことねえ・・」
ガラミティ:「大尉!HQより無線です!」
バーン:「・・黒騎士1だ。HQ、聞こえるか。」
ショット:「こちらHQ。戦況はどうだ。ストロベリー戦隊は、増援を受けられずに、孤立しているそう
だが。」
バーン:「ヘリが気になったが、ダメージをうけたのだろう、撤退した。」
ショット:「そうか。敵の戦車部隊は?」
バーン:「同じく撤退を開始した。どれほどのダメージを与えたかに関しては、砲撃による煙幕のため
はっきりとはわからない。だが、勝機は我がほうにあるとみた。」
ショット:「損害は?」
バーン:「ZSU−23−4が4輌、T−62が16輌、BMPが12輌だ。数のうちにはいらん。」
ショット:「そうか。ちょっとまて・・・損害は、軽微だそうであります・・・・はっ、承知いたしまし
た。・・・・今、大隊長からの指示があった。作戦目的として、敵部隊の殲滅を優先させろ。高地の占拠
は、後続にやらせる。」
バーン:「了解した。敵を、追撃・包囲し殲滅する。」
ショット:「だが油断は禁物だ。損害が大きくなった場合は、すみやかに撤退せよ。」
バーン:「ふん・・」
ブチっ
ギネス:「なんといってきたんです、大将?」
バーン:「これより、敵に追撃をかける。」
ガラミティ:「敵は、すべて後退しました。横隊隊形をとって一気に丘を乗り越え、全車挙げて、後退中
の敵部隊に殺到しましょう!」
バーン:「・・・でしゃばり女ども、我々ポーランドの黒騎士が本当の戦争というものを教えてやる・・
・よし、全車に通達しろ!」
ガラミティ:「こちら黒騎士1っ!全車停止!横隊隊形をとれ!一気に丘をのりこえるぞ!」
(続く)