支離滅裂
「ションベーン!ションベーン!」
叫びながら踊り狂う子供達。
自分も昔はあんな感じだったんだな、可愛いもんだ、
などと立ち止まって考えているところに友人が通りかかった。
中学の時からの友人だが、ここ2、3年会っていなかった。
久々だな、から始まって遊んでいる子供はおまえの子かという話題になった。
もちろん見ず知らずの子供達だったが、自分ももうそんな歳になったんだなと考え、
感動してしまった。
友人とはそこで別れ、また今度会おうなんて言ったがいつになる事やら分からない。
その後ずっと『お前の子か事件』が気になって頭から離れなかった。
確かにもう4、5人の友人は結婚して子供もいるが、自分が結婚だなんて考えられないし、
子供を連れて歩く自分の姿なんかは想像すら出来ない。
今はまだ結婚するには若いだろうが、
結婚していてもおかしくはない年齢には近付いている。
子供の頃は早く結婚したいと考えていた。漠然と。
そうできる年齢に達した今は、おじけずいてしまって考える事すらない
長く付き合った彼女が、傍らに座ってテレビでも見ているなら話は変わってくるだろうが、
彼女すら別れたばかりでいないときている。
付き合った期間は短かったのもあり、結婚のケの字も会話に出てこなかった。
というか今までそんな会話になった事すらない。
皆が口をそろえて言うように、結婚は最後になりそうな気がする。
既婚者がよく言う言葉で、「結婚は人生の墓場」というのがあるが、
間違いなくその言葉に翻弄されている自分が腹立たしく感じられる。
想像はつく。
男は仕事、女は育児、それぞれがプロとしてこなしていかなければならない。
自分一人の事しか考えなくてよかった今までに対して、
パートナーと子供の事が加わってくる。
子供のいない家庭もあるだろう。
身体の諸事情や金銭面でそうなのは仕方がないが、
たいした意味もなく子供のいない結婚生活というのは考えられない。
子供がいらないなら結婚なんてしなくてもよさそうなもんだ。
そういう考え方がどこからともなく湧き出てくる。
空は薄暗くなり、辺りにもヒンヤリとした空気が渦巻いてきた。
久々の休みもこれで終わりだな。
何件かの行きつけの店を巡り、公園で日向ぼっこをして子供達を眺め、
友人と会って考えさせられ今に至る。
自販機でホット缶コーヒーを買ったつもりが、冷えた缶が転がり出てきて力無く笑う。
歩いている内に結構遠くまできていた。
空腹感がつのってきたので何か口に入れようとコンビニを探す事にした。
見つかったのはコンビニではなく、
古びたガラスケースに淋しい数のメロンパンが置いてある小さなパン屋だった。
中に入ると、愛想の良いおばさんが寒いねえなどと言いつつお薦めのパンを教えてくれた。
メロンパンとお薦めのチョコレートパン ―この店オリジナルらしい― それから牛乳を買うと店を出た。
紙袋をブラブラとぶら下げて、どこで食べようかと彷徨った。
こんな寒い中わざわざ外で食べなくても、帰ってから食べればいいとも思ったが、
なんとなくそうはしたくなかった。
小さな公園を見つけた。
小学生の頃道に迷って辿り着いた公園に似ていた。
なんだか気分的にもその時の感じに似ていたのだろう、やっと見つけた休める場所。
夕闇の中その公園でのんびりとパンをかじり、牛乳を飲んだ。
何を考えるともなく歩いて家に帰り着くと8時をまわっていた。
夕食は済ませてきたと伝え部屋で横になり、
在り方というものについて ―もしくはそれに似た何かについて― 考えてみた。
いつもは冗談しか言わず、真剣かと思ったら冗談ですますようなハッキリとしない自分には、以前から嫌気がさしていた。
きっと、もっとハキハキ言っても構わないのだろう、いやそうすべきなのだ。
それは分かっている。
同じ事を違う人に何度言われたか分からないし、実際は誰が言い出したのかも分からなくなってしまった。
自信の無さ、弱さしか伝えれない事も分かっている。
めっきり弱くなってしまった。
別に以前は強かった訳でもないが、少なくとも最近よりは良かったはずだ。
そんな事を考えていると、携帯電話が鳴った。
出ないでおこうかとも思ったが、結構あきらめずに鳴っているのでとってみる事にした。
妹からの帰りが遅くなるという電話で、
しかもそれは今週になって4回目のことだっただけに、
なんやかんやと忠告しているとさっきまで考えていた在り方はどこかに飛んでいってしまっていた。
なんだか可笑しくなってきて、もう『さよなら』は言わない事にした。
ベトナムになりたくはなかった。
すがすがしい朝はやってこなかったが、あの場所では今日も子供達が踊り、叫んでいるのだろうと考えれた。
まだ何も始まっていないし、何も終わってないのだ。
そろそろ始める準備にとりかからなくては、第1期は終わったかも知れないが第2、第3はまだまだこれからだ。
勢いよく立ち上がると、立ちくらみがして倒れた。
おやすみなさい
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