丸屋善八という名前が丸善になり、
◯井◯◯がタキシンとなるように
昔から略語はあったようだ
近所のコンビニに向かう途中
ふと、「久々にブラブラするか」と、こう思った
このところ暇であり時間がなく、それのムダ遣いができなかった
久々に「時間のムダ遣いしたい」気持ちになり、ちょっと近所をぶらついてみた
近所をぶらつく時に必ず立ち寄る場所があの公園だ
以前車がなく、ベスパでうろついてた頃も立ち寄っていた
煙草を吸い、またバイクに乗り走り出す
そういう使い方をしていた公園だった
今日も思わず足が公園に向かう
せせり過ぎて化膿し、汚くなった耳のピアスを触る
まだ治ってない
ポッケから小人のような手つきでKOOLを取り出す
煙草は二十歳になってから
そんな世迷言が記載してあるこの入れ物は
数日前こぼしたコカ・コーラのベトベトに浸っていた
ポケットの中がベトベトになっている
火のつきが悪くなった煙草に火をつけていると
公園が見えてきた
数年前の夜中
その公園で起こった事件を知っているせいか
暗い空気が立ちこめているような気がしてならない
公園に人はいなかった
ベンチに座り、煙草を吸いながら百科事典を読む
もちろん百科事典などない
あんなもの持ち歩くやつはいない
いても許さない
優しい紳士を気どってゴミ箱を探したが、近くに見当たらなかったので
その辺に煙草をはじき捨てた
自分の仕草で、ふと短大時代の事を思い出す
駅で電車を待っていた
向かい側の女子高生と目が合い
笑いかけられたとかそうじゃないとかで、友人と盛り上がった
その時、「ピンッ」と友人が煙草をはじいた
煙草は線路を飛び越し、向かい側の線路の中ほどまでとんだ
それから俺もはじく癖がついた
穴を狙ってはじいてそれが見事命中だと嬉しかったりする
法律的にいけない事で、バレたらただじゃすまない事も知っている
スリルだ
だから今もまた、周りに見ている人間がいないかどうか確認し
誰もいないと分かると安堵のため息をついた
ブランコが音を立てた
ハッとして振り返る
ひとりでに揺れるブランコ
あの夜、彼はそこに座っていた
座りながら泣いていた
勝手な思いこみだが、きっとそうに違いない
「年寄り」
それが彼の呼び名だった
立ち上がり、ブランコに近づいた
錆びかけのブランコは「年寄り」に見えた
手錠は想像していたより重く、部屋は寒かった
煙草を取り出す
震える指で2本同時に火をつけた
1本は俺
もう1本は「年寄り」の座っていたブランコに
そのまま公園を後にした
たくさんの間違った部分を間違いだといいきれるのだろうか
ー キノピオ書房:文化の怠り より抜粋 ー
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